物流DXとは|早急に取り組むべき理由とDXを推進する物流ロボット

by Megumi Yamada

ここ数年、トレンドワードとなっている「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。日本においても国主導でDXが推進されており、経済産業省が2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置、9月にはDXレポートを発表しました。 物流業界においても、2021年6月に物流政策の指針となる「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」を閣議決定し、コロナ禍における社会情勢の変化を踏まえ、物流DXの推進を図るべく方向性を打ち出しました。

一方で、「DXはなんとなく理解しているけれど、物流DXとは具体的に何をすれば良いのかわからない」という方は多いのではないでしょうか。 そこで「物流DXとは何なのか」「物流DX実現に向けたロボット活用」について解説していきます。

DXとは?早急に取り組むべき理由


DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

つまりDXの本質は、単なるデジタルシフトではなく、「デジタル環境の変化によって、ビジネスが大きく変わらざるを得なくなった」という前提のもと、「データやデジタル技術を活用して競争優位性を確立すること」にあります。

今後、ビジネス環境はもちろん、ライフスタイルや働き方も、より一層その変化を加速していきます。従来の属人的、場当たり的なシステムは新しい時代への対応を困難にし、業務効率だけでなく競争力の大きな低下をも招くこととなるでしょう。実際に、日本企業がこのままDXを達成できず、現在の状況のままであれば、2025年~2030年の間の5年間で、約12兆円もの経済損失が発生すると予測されており、まさに今、早急な対応が求められます。

物流DXの現状


変化が求められる時代の中で、物流業界におけるDXはどのように捉えたら良いのでしょうか。

物流DXは国土交通省により「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義されています。単に自動化やデジタル技術を導入するだけではなく、「これまで物流業界が抱えていた課題を抜本的に解決し、他産業に対する物流の優位性を高め、産業の国際競争力の強化につなげる」ことが重要と言及されています。

物流業界では、以前から構造的な問題があったことに加えて、コロナ禍でさらにその問題は加速しています。にも関わらず、物流業界におけるDX化は、他業種と比較してもさらに遅れをとっているのが現状です。

物流業界のDX推進が遅れている背景には、日本特有の事情があります。日本の物流現場は状況に応じた臨機応変な対応を求められる傾向があります。柔軟な対応を行うためにはITによる標準化よりもアナログな対応の方が都合が良い場面も多く、DX推進に踏み切れない企業は少なくありません。また、日本では現場主義の風潮が強く「トップダウンでまずはやってみる」という身軽な対応が取りにくい企業が多いという背景もあります。

物流業界が直面している課題


物流業界ではIT化も依然として限定的です。DXについて現場の理解を得るのは容易ではないでしょう。しかし、物流業界は今、変革を避けては通れない切迫した事態に直面しています。

時間外労働の上限規制による「2024年問題」

2024年問題とは、「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用開始により発生する、トラックドライバー不足や輸送停滞問題です。

近年、運送・物流事業におけるドライバーの高齢化・人手不足は深刻な問題となっています。トラックドライバーの数は1995年を最後に減少しており、現在の状況が続けば2030年には2015年の3割に該当する25万人程度が減少すると推測されています。また、ドライバーの年間労働時間は、全産業平均の2割程度多いことが明らかになっています。そのような慢性化した長時間労働を是正すべく施行されたのが「働き方改革関連法」です。猶予期間を経て、2024年4月にトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されます。

長時間労働の改善に向けた環境整備が実現する一方で、トラック輸送の供給は大きく制限されることとなります。2024年4月以降、年間時間外労働時間の上限が発動されれば、トラック輸送のリソースが減少し、運びたくても運べない“物流クライシス”が引き起こされる可能性が一気に高まります。

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EC需要拡大による「物流クライシス」

運送・物流事業における慢性的な人手不足と、EC市場の急成長に伴う「小口配送」の急増により、需要が供給を大きく上回ることでモノが運べなくなる現象、それが「物流クライシス」です。

新型コロナウイルス感染症の影響により巣ごもり消費が増えたことで、消費行動のネットシフトは加速しています。それに伴い、小口配送が増加し、輸送の多頻度・多品種・小ロット化が進んでいることが、物流現場を追い込んでいます。

例えば100の物量を出荷する場合、従来の大口配送なら一括でできた作業が、小口配送になると配送・ピッキング・梱包すべての工程が細分化されるため、現場の作業負担は従来と比べ非常に大きくなります。物流効率は広範囲で悪化の一途を辿っており、現在のトラックの積載効率はわずか40%程度で、この数値は30年間下がり続けています。

今後ますます高まる需要に対し効率の悪化と人手不足により破綻を迎え、このままでは2030年には従来の35.9%の荷物が運べなくなると予想されています。

営業用貨物自動車の需給バランス日本ロジスティクスシステム協会「ロジスティクスコンセプト2030」より作成

コロナ禍で浮き彫りになった「物流BCP」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、物流倉庫でもクラスター発生防止のため、ソーシャルディスタンスの確保等の感染症対策が必須となりました。今まで人手に頼っていた物流現場は、人が来ること・集まることが出来ずに倉庫内作業を行えなくなる事態も発生。巣ごもり消費によるEC需要の増加に対応しきれず、世界の物流に大きな混乱が巻き起こりました。
物流は「止めない」ことが大前提であり、そのための社会的責任を担っています。止めない物流を実現するために、災害など有事の際に対応できる物流倉庫は、顧客企業の信頼獲得に繋がります。そうした「BCP」という観点からも今後は有事対応が可能な物流倉庫を検討していく必要があります。

物流DX実現に向けたロボット活用


物流業界が直面する大きな課題を乗り越えるために、物流の自動化・機械化を通じた既存のオペレーション改善や働き方改革の実現は、物流に関わる企業が成し遂げなければならない重要事項と言えます。中でも、人手不足を解消し、非接触・非対面型の物流を構築するためにに欠かせない物流ロボットは、コロナ禍を経て必要性と緊急度が高まり、一気に導入が加速しています。

物流業界もさることながら、これからのビジネス環境はテクノロジーの進化や新型コロナウイルスの流行をはじめとした災害等によって、将来の予測が困難な状況にあります。そんな予測不能なビジネス環境の変化に柔軟に対応できることも、物流ロボットの大きなメリットのひとつです。実際に、コロナ騒動が始まる前に物流ロボットを導入していた企業では、人員を増やすことなく物流量の増加に対応できた事例があります。

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ロボット見学会

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