WMS・WCS・WESとは | 物流倉庫自動化に必要なシステムをわかりやすく解説

by Megumi Yamada

物流センター効率化を目的とした自動化の際に、単純にロボットを導入するだけでは目的を果たすことはできません。物流センターの効率化において重要なのは、自動機器とセンター全体の状況を把握しているシステムとの連携です。本記事では、物流センター自動化に重要となる自動化システムと、ロボットをはじめとした自動機器との関係について説明していきます。

物流センターでロボットを活用して効率的に自動化するには


物流センターへロボットを導入する際には、それらが得意とする作業について知っておく必要があります。ロボットなどの自動機器が得意なことといえば

・同じことを繰り返し正確にやる

・重たいものや危険なものを運ぶこと

・単純に決められたものを運ぶこと

などがありますがそれらを詳しく説明していきます。

ロボットは繰り返し作業が得意

作業者にとって単調な作業はロボットにとっては得意な作業になります。さらにはそれらを毎回正しくやることも得意です。もともと、一般的なロボットは教えられた動作を正確に繰り返すことに使われてきました。物流センターでは箱を開けるだけの作業など、数多くの繰り返し作業があります。自動化を検討する際にはまずはそれらの作業を洗い出して自動化を検討するのがおススメです。

重量物運搬などの危険な作業

重量物を運搬するなどは作業者にとっては危険な作業となります。作業者が危険な作業に従事することはケガのリスクもありますが、離職の可能性も出てきてしまうために、可能であれば従事させたくはありません。そのような作業をロボットに置き換えることで作業者がケガするリスクを減らし、さらには快適な職場を構築することも可能です。

例えば出荷のために積み込み作業は体力的にキツイものがありますし、ちょっとした油断でケガにつながることがあります。そのような作業をロボットに任せることで体力的な負担が減り、さらには危険源から遠ざけることが可能となります。このように危険な作業を自動化するにもロボットは最適です。

生産性の低い搬送作業

作業者にとっての搬送作業はモノを動かすだけの作業となります。搬送作業はモノを動かしているので作業と言えますが、モノを取りに行くときはムダな歩行となる場合が多くなります。そのような状況では運搬をロボットに任せることで、作業者はムダな移動をせずに作業のみに集中できる環境になります。このように作業者の効率を上げる目的でもロボットは最適です。

物流センターでロボットと連携して使用されるシステムの説明


最近の物流倉庫では様々なシステムを活用して運営がされています。主なシステムとしてはWMS・WES・WCSなどがあげられます。ここではWMSと連携してロボットを含めたマテハンを動作させるシステムとしてWCS、作業者の動きを把握して最適化するWESを説明します。

物流センターの「WMS」とは?

WMSとは、「Warehouse Management System」の略で、物流倉庫内のモノの状況を把握・管理できる倉庫管理システムです。

主な機能としては、入出荷などに関わる全ての商品情報を管理する”サーバ管理機能”や、ハンディターミナルなどを使用して入出荷時の検品作業をする”検品機能”、自動機とデータのやり取りをしてセンターを自動化する際に活用する”マテハン機器連携機能”などがあります。

このように物流センター運営に欠かせない、作業を管理する機能を数多く持っているのがこのWMSです。

WMSに関しては以下の記事で説明しておりますのでそちらを参照してください。

 この記事をチェック
→ WMSとは?物流倉庫管理システムの機能や役割、導入ステップを解説

物流センターの「WCS」とは?

WCSとは(Warehouse Control System)の略で、日本語訳では「倉庫制御システム」です。実際に自動化された部分をコントロールする役割を持っています。

WCSはコンベアやロボットなどの搬送設備に対して適切なタイミングでの指示をリアルタイムに行い、倉庫内にある搬送物の流れを制御します。あくまでも制御の対象は設備になりますので、全体の状況を把握したり作業者を管理することはできません。

物流倉庫ではWCSに制御されるものは以下のモノがメインとなります。

・コンベア

・格納場所となる自動倉庫

・自動制御ロボット

WCSは全体の状況は把握できないのですが細かな動きを制御してWMSが最適と判断したモノの動きを実際に指示する役割を持っております。

物流センターの「WES」とは?

WESとは(Warehouse Execution System)の略で、WMSとWCSの中間的に位置する役割のシステムです。WMSが倉庫全体を最適化するために指示を出し、それらをもとにしてWCSがロボットに対して動作指示します。

しかしWMSとWCSだけでは作業者の動きなどが把握できないので、倉庫全体の動きを把握することが難しくなります。その際に活躍するのがWESです。WESは、スマートフォンなどの端末を使いながら作業者の作業状況をWMSとやりとりをしたりすることが可能なシステムです。

例えばWMSは倉庫の全体像を把握しており、WCSはその情報をもとにしてマテハン機器を動かします。WMSが全体を把握しWCSがマテハン機器を動かしますが、WESはその他作業者の動きも把握しながら倉庫全体を管理するシステムとなります。WESを導入することで作業者やロボットを含めた全体の動きを把握しながら最適に倉庫運営ができるようになると言えます。

WMS・WCS・WESの動き

WESはスマートフォンなどの情報から作業者のリアルタイムでの作業進捗を把握し、WCSはマテハン機器の動きなどの情報を把握することで、WMSが作業者やマテハン機器に指示を出せるシステムとなります。

倉庫自動化は完全に作業者が無くなることはありませんので、これらの3つのシステムを活用して全体・人・マテハン機器の状態を把握して、適切な作業指示を出すことで効率的な自動化が進められるようになります。

各システムとロボットの連携


自動化するにあたっては生かすも殺すもシステム側との連携が重要になります。

ロボットの能力が高いからといって、たくさんの業務指示を与えると他のセクションとの連携が取れずに、コンベアが詰まったり、途中で仮置き場が必要になるなどの弊害がでます。

ここでは自動化時に連携が必要なシステムの中身を見ていきましょう

倉庫を自動化する際にはまずはWMSと連携するところから始まります。自動化で重要な部分はWMSとロボットを動かすWCSとの連携です。連携することでロボットを効率的に動かせるようになり、それによってロボットの能力を最大限生かせます。さらにはWESとの連携により倉庫全体を効率的に動かすことが可能です。

入出荷

入荷は倉庫に入れ込むだけの単純な作業に思えますが、システムと連携することで効率的に入庫させることも可能です。

例えば入庫後に複数の倉庫へのルートがある場合などは、システム側と連携せずに入庫してしまうと、ひとつのルートのみに格納してしまい出庫時に効率的に出すことが難しくなってしまいます。WMSと連携することによって入庫時から出庫する時の効率を考慮して作業させることが可能となります。

保管

保管・運搬は特にシステムとの連携が重要なポイントになります。なぜなら保管する際にはすでに出荷の指示が入っていたり、需要予測などですぐに出荷の予定があるものも多く含まれているからです。

例えば入庫完了後にすぐに出荷しなくてはならない商品があったとします。WMSと連携していれば一番出荷しやすい場所に格納することが可能となりますが、連携していないと機械が起きやすい場所に格納してしまい、結果として出しにくい場所に格納してしまう場合もあります。

仕分け

仕分け作業においても同様にWMSと自動機の連携が不可欠となります。物流センターで商品を出荷する際に同じ箱に複数を梱包することはよくあると思います。この時に仕分けされてくる順番がバラバラだとなかなか一箱分の商品が集まらずに効率的な仕分け作業ができなくなります。

また、仕分けを作業者が実施する場合にはWESを使用してWMSと連携することで、WMSが指示する精度をあげることも期待できます。

物流自動化におけるロボットとシステム連携まとめ


このように物流センターを効率的に自動化する際にはシステムとの連携が不可欠となります。

近年登場した知能化ロボットは、ロボット自身が状況を判断して作業することも可能ですが、ロボットが判断できるのは目の前の状況なので、全体の情報はWCSがWMSなどの全体を把握している別システムからデータを取得する必要があります。さらには、WESを使用して作業者の進捗状況をリアルタイムに把握することで、ロボットを効率的に動かすことが可能となります。

つまりは、物流倉庫を自動化によって効率化する際には、自動機器と各システムとの連携は不可欠です。コスト削減を目的としてシステムとロボットの連携を簡素化してしまうと、結果的には効率が上がらずに無駄なコストとなってしまいます。

自動化の専門家に相談しながら、物流倉庫全体の効率化の検討を進めてみてはいかがでしょうか。

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