AGV特集① | なぜ今AGVなのか?愛知県の搬送自動化事情

by Megumi Yamada

自動車産業を中心に様々なモノづくり産業が集積し、製造品出荷額等が44年連続で日本一になるなど世界有数の産業集積地となっている愛知県。一大工業地帯として発展を続けている同県は、世界的なメーカーであるトヨタ自動車の生み出した「トヨタ生産方式」、通称TPS(トヨタ・プロダクション・システム)を中心に、ムダを極限まで排除した緻密な生産計画と徹底した管理により、発展を続けています。 

そんな日本の製造業の中心地であり、生産工程の合理化・自動化の進歩が著しい愛知県において、残された最後の鍵と言えるのが「物流・搬送」工程の自動化です。株式会社Mujinの名古屋営業所長として、自動車産業を中心としたお客様へのAGV導入を支援する木全(きまた)に、現在の愛知県の搬送自動化事情を聞きました。 


株式会社Mujin 名古屋営業所長 木全洋一郎

<PROFILE> 1986年名古屋生まれ。東海地区の設備商社でトヨタグループ様を中心に10年間以上設備営業に従事し、数多くのロボット自動化案件を担当。従来の設備営業の傍ら新規事業を立ち上げ、業種にこだわらずロボットやAGVを含めた提案を実施。 2020年よりMujinに入社し、現場最優先の文化の中で設備営業を務めた経験を基に、MujinのAGV販売体制を強化。

生産ラインの自動化から搬送工程の自動化へ

これまで愛知県の製造現場では、生産ラインの徹底した合理化・自動化が進む一方で、工場内での製品や部品の運搬業務は、従来通り台車やフォークリフト、あるいは人手が中心となって行われていました。 

その背景について木全は「生産業は基本的に価値を生み出すものに投資を行います。物を作り出すもの、つまり生産プロセスへの投資は積極的に行いますが、搬送に関しては生産への付加価値の低い作業として、どうしても投資の優先度が低い工程として判断され、長らく自動化が進みませんでした」と語ります。 

しかし、2020年あたりを潮目に、自動車メーカーを中心とした搬送自動化への投資の動きが見えてきたと言います。「期間を限定して有期契約によって雇用される、いわゆる”期間工”が集まらなくなってきたんです。現実的な人手不足に危機感が芽生えた中で、問題視されたのが物流工程です。ただ運ぶだけの作業に、工場の20%〜25%程度の人手が掛かっている。今まで自動化を進めていく中で、ずっと人手作業が減らない工程のひとつが、物流・搬送工程だったんです。加えて、大規模な工場だと、重い台車を押しながら1日2〜3万歩という長距離を歩いたり、重い箱を段積みしたり、かなりの重労働になるので、せっかく教育してもどんどん人は辞めていくし、集まらない、そういう悪循環が繰り返されていました。手はこれから一層貴重になります。だからこそ『人には付加価値のある作業をしてもらいたい』という自動車メーカーさんの考え方も投資の後押しになり、いよいよ搬送部分の省人化を進めようという流れが加速していきました」

トヨタ自動車株式会社 本社工場 機械部 様

搬送自動化手段としてのAGVのメリット

人手不足が顕在化する中で、人がより付加価値の高い仕事にシフトするために、工場内物流自動化の動きが加速し始めた愛知県の製造現場。そんな潮流の中で、搬送自動化の手段として選ばれているのがAGVです。搬送を自動化する手段はAGV以外にも選択肢がある中で、なぜAGVが選ばれているのでしょうか。 

その理由について木全は「水平展開のしやすさが1番大きいと思います。QRコードを貼ったら縦横無尽に走り回れるAGVは動作の確実性も高く、拡張性にも優れています。れまではコンベヤが主流でしたが、コンベヤは固定設備なので、大量生産から種変量へとシフトしている今の生産ラインにはフィットしづらいんです変動時に設備が不要になったときに、他の生産ラインで流用することがどうしても難しい。レイアウト変更等で設備を撤去する際には一応流用できるように在庫として持っておくけれど、コンベヤは高さや長さなどの仕様によって流用できる条件が限られるため、結局管理が大変でほぼ廃棄してしまいますまた、大規模な工場になってくると、単純に長距離を運ぶことになるので、距離分の設備コストが必要になってくる。そういった観点から、取り回しの良いAGVが、もっとも無駄がない搬送自動化の手段なんです」と分析します。 

愛知のAGV活用の特徴

愛知県の自動車メーカーを中心に数々の製造現場へのAGV導入を手掛けてきた木全に、愛知県の工場におけるAGV活用の特徴や、工場にAGVを導入する際の注意点を聞きました。 

製造業でのAGV活用にあたって気をつけないといけないのは、いかに生産を止めずに運用できるか、安定した運用体制を作れるかどうかです。特に愛知県の工場は、多かれ少なかれトヨタ生産方式がベースになっています。在庫を持たないジャスト・イン・タイム方式において、部品など生産に必要な材料の安定供給は必達事項です。そういった仕様に対応できるメーカーやSIerを選ぶことが、製造業のAGV導入・活用においては重要になってくるでしょう。 

近年活用されているAGVは新しい技術なので、実際の生産現場で安定して稼働させるためには、現場に合わせたサポートが必要です。そういった側面から、まずは信頼性を確認する為のスモールスタートから実施し、使用する側であるお客様と提供する側であるメーカー・SIerの間で信頼関係を十分に築いた上で広範囲に展開していくことが、様々なAGV導入を手掛けて得た『製造業で効果的にAGVを活用していただくために最適な導入手順』です。 

Mujinはその手順を怠ることなく、製造業のお客様に安心してご活用いただけるご提案を進めています。その過程で、AGVがどういったものかをご理解頂ければ、製造業におけるAGVを活用した物流工程自動化は、きっと皆様の想像よりシンプルです。MujinはPtoPでのスモールスタートから物量データを用いた全体提案まで、幅広いサポートが可能です。工場内のさまざまな物流工程の自動化を、ノウハウの内製化にご協力させていただきながら伴走することも可能ですので、一度ご相談いただければと思います 

トヨタグループ様に導入されているMujinのAGV

トヨタ自動車様をはじめ、トヨタ自動車九州様、ロジスティード様など、各業界のさまざまな大手企業様に活用されている「Mujin AGV」。次回は、MujinAGVがなぜ選ばれているのか、その理由に迫まります。

 AGV特集記事第2弾
→ AGV特集② | 愛知県の主要メーカーが選ぶAGVとは?製造業AGV導入のポイント

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