構内物流とは|生産性向上に欠かせない工場内物流改善のポイントを解説

by Megumi Yamada

昨今の製造業ではスマートファクトリー化がトレンドとなっており、多くの企業がデジタル技術を導入して製造現場の改善に取り組んでいます。しかし、工場内での物流に関する改善はいまだに手つかずであり、非効率なままになっている企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、工場内での物流を意味する「構内物流」をテーマに、その重要性や具体的な作業内容、改善する手順などを解説いたします。

構内物流とは


構内物流とは、工場の敷地内で行われる物流業務を指す言葉です。生産物流と呼ばれることもあります

製造業の工場では、倉庫から製造現場へ、ある工程から別の工程へ、といったようにモノが移動しながら製品が作られています。工場内でのモノの移動を効率化することは、工場全体の生産効率を高める上で欠かせない取り組みの一つです。

製造業における物流業務は、いくつかの領域に分けられています。構内物流以外の領域についても理解しておきましょう。

調達物流

製品を作るためには、必要な原材料や部品、資材などを仕入先から調達しなければなりません。調達におけるモノの流れを指す言葉が「調達物流」です。昨今の製造業では、調達のグローバル化や供給難などの要因から調達物流も重視されています。

販売物流

工場で作られた製品は、得意先へ直接納入されたり、配送センターや物流倉庫、小売点などを経由したりして消費者のもとへ届けられます。この時のモノの流れが、「販売物流」です。一般的に「物流」と呼ぶ場合は、販売物流を指します。昨今ではEC市場の急激な成長に伴って販売物流の効率化も求められています。

回収物流

製造業では、製品を生産・販売して終わりではなく、使用済みの製品や不良品を回収したり、不要品のリサイクルを行ったりする場合があります。この時のモノの流れは、「回収物流」と呼ばれています。これからの製造業には今まで以上に地球環境への配慮が求められていくことから、回収物流も重要になるでしょう。

製造業における構内物流の重要性


工場はモノづくりによって付加価値を生み出しています。モノの運搬をはじめとする構内物流は付加価値を直接生み出しているわけではないため、軽視している企業は少なくありません。しかし、製造業において構内物流は極めて重要な役割を担っています。

たとえば、当然のことですが、生産ラインを動かして製品を作るには必要な原材料・部品・資材などが手元にそろっていなければなりません。倉庫からの出庫が滞っており、生産ラインを動かしたいタイミングで必要なモノがそろっていなければ、モノづくりができなくなってしまいます。

ほかにも、構内物流が最適化されていない工場では、次のような問題が頻繁に発生しています。


  • 必要なモノが工場内のどこに保管されているか分からず、探し回る手間が発生する
  • 生産ラインへ供給されたモノが投入順序を考慮した並び順になっておらず、作業者が仕分けしながら作業を行っている
  • 必要数以上のモノが生産ラインへ供給されており、作りすぎが発生する要因となっている
  • 完成した製品や使用済みの材料・資材が生産ライン内にたまってしまい、作業者が作業を中断して搬出している
  • モノの置き場所や適正な在庫数が決まっておらず、スペースが確保できな

このように、構内物流は製造現場が円滑に動くためになくてはならない業務といえます。構内物流を最適化して製造現場がモノづくりに集中できる環境を整備できれば、工場はより多くの付加価値を生み出せるようになるでしょう。構内物流を単なるモノの運搬と捉えず、改善に取り組むことをおすすめします。

構内物流の作業内容


構内物流では、モノを運搬する以外にもさまざまな作業が行われています。ここでは、構内物流における主要な作業内容について解説します。

受け入れ・入庫

仕入先へ発注した原材料・部品・資材などが調達物流を経て工場に入荷すると、受け入れ作業や入庫作業が行われます。発注したモノが正しく入荷しているかを確認した上で、カゴ台車やフォークリフトを使って棚などの保管場所へ搬送するというのが一般的な流れです。ケース商品の場合は、パレットからの積み下ろしが行われることもあります。

受け入れ作業や入庫作業では、重い荷物を扱う重労働が多く、作業者にとって大きな負担となっている傾向にあります。保管場所への搬送にフォークリフトを活用したり、積み下ろしにデパレタイザーを活用したりすると、作業者の負担を軽減でき、円滑に作業が進むでしょう。

保管

仕入先から入荷した原材料・部品・資材などは、製造現場で使用するまでは在庫として倉庫で保管されます。また、製造現場で作られた製品も、出荷されるまでは製品在庫として倉庫で保管されることになります。

倉庫で保管する在庫は、ロケーションや数量などを正しく管理しなければなりません。正しい在庫管理ができていないと、あると思っていたモノがなくて欠品が発生したり、必要なモノを探し回ったりしなければならない可能性があります。

人の手に頼った管理では正確な在庫状況をリアルタイムに把握するのが難しいことから、多くの企業でシステムの導入・活用が進められています。また、昨今ではロボットを活用した自動倉庫システムを導入する企業も増えており、入庫・保管・出庫までの一連の作業を自動化する動きも見受けられます。

出庫・配膳

製造現場が必要とするモノを、必要な時に、必要な量だけ、必要な場所に供給することは、構内物流の重要な役割の一つです。生産指示にもとづいて材料や部品を保管場所から出庫し、製造現場へ供給する作業が行われています。

出庫・配膳では、指示書(ピッキングリスト)に書かれた品番や数量を確認しながら製造現場に供給するモノを集めるピッキング作業が行われます。ピッキング作業には素早さと正確さが求められるため、作業者のノウハウが必要とされており、属人化しているケースが少なくありません。

一部の企業では、上述した自動倉庫システムやAGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)を活用して作業者が動き回らずにピッキングできるようにしたり、ピッキングを支援するシステムを導入したりして、効率化が進んでいます。

搬送

工場内では、さまざまなシーンでモノの移動が発生しています。


  • 材料や資材を倉庫から製造現場へ搬送する
  • 製造現場内で、材料・資材・仕掛品・完成品を搬送する
  • 完成した製品や使用済みの資材を製造現場から倉庫へ搬送する

こういった搬送作業の多くは今でも人の手で行われており、非効率なままになっている傾向にあります。製造現場で働く作業者自身が搬送作業も行っており、モノづくりに集中できていないケースも少なくありません。

昨今では、製造現場がモノづくりに集中して付加価値を向上していくために、AGVやAMRを導入して搬送作業の自動化・効率化に取り組む工場が増えつつあります。

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出荷

工場で作られた製品は、完成品置き場や倉庫で一時保管された後に出荷されます。製品によっては、出荷しやすいように仕分けしたり、梱包して荷姿を整えるといった付帯作業も行われています。

上述した受け入れ作業や入庫作業と同様に、出荷作業には重い荷物を扱う重労働が多く、作業者の負担となっている傾向にあります。フォークリフトやパレタイザーといったマテハン機器をうまく活用し、効率よく出荷できる環境を整えていくべきです。

構内物流を改善する手順


構内物流を改善するにあたって、いきなり物流自体の効率化に取り組むのは得策ではありません。構内物流の改善には適切な手順があり、それに沿って進めることで工場全体の効率化を実現できます。ここでは、構内物流を改善する手順を3つのステップに分けて解説します。

ステップ①:製造現場の効率化を重視する

構内物流の本来の役割は、製造現場が効率よくモノづくりを行えるようにサポートすることです。そのため、まずは製造現場の効率化を重視した取り組みを進める必要があります。

たとえば、工場内でのモノの搬送を自動化するためにコンベヤを導入すると、搬送作業にかかる工数自体は削減できます。しかし、コンベヤのように大きなスペースを必要とする設備を狭い工場内に導入してしまうと、生産に使えるスペースが少なくなったり、レイアウト変更がしにくくなったりして、本来高めるべき生産効率がかえって悪くなってしまう恐れがあるのです。

製造現場では、さまざまなムダが発生しています。それらのなかから構内物流が原因となっているものを抽出し、優先的に改善していくようにしましょう。具体的には、次のようなポイントから改善するのがおすすめです。


  • 製造現場の作業者が行っていた搬送作業を物流担当者が代わりに行う
  • 必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ製造現場に供給できるように、出庫・配膳作業のあり方を見直す
  • 完成した製品や使用済みの材料・資材を速やかに回収し、作業スペースを圧迫しないようにする

ステップ②:モノづくりの流れを管理する

構内物流には、モノを扱う過程でさまざまな情報が集約されてきます。たとえば、原材料・部品・資材などを製造現場に供給したり、完成した製品を回収したりする過程で、製造現場でのモノづくりが計画通りに進んでいるかどうかが把握できます。また、受け入れ作業の進捗によって納入が遅れている発注品を把握したり、工場全体の在庫がどの程度あるのかを把握したりすることも可能です。

構内物流は単にモノを運ぶだけでなく、工場内のあらゆる情報を把握して管理する役割も担えます。構内物流をシステム化し、モノづくりが円滑に流れていくような仕組みを構築できれば、工場全体の効率化が進むでしょう。

ステップ③:構内物流自体の効率化を行う

最後に、上述した構内物流の作業そのものの効率化に取り組んでいきます。作業手順の見直しや工場内のレイアウト改善、システムやIoTの導入など、さまざまな方法で構内物流にかかる工数や作業者を削減しましょう。

構内物流を効率化するにあたっては、ロボットによる作業の自動化も効果的です。昨今では、さまざまな作業を自動化できる物流ロボットが存在しています。


  • 入出荷作業における積み込み・積み下ろしを自動化するパレタイザー・デパレタイザー
  • 入庫・保管・出庫作業までを自動化する自動ロボット倉庫
  • 工場内のあらゆる搬送作業を自動化するAGV・AMR

特に、AGVやAMRは狭いスペースでも稼働することができ、限られた工場内のスペースを有効活用できる点から、積極的に導入が進められています。

構内物流の効率化に役立つロボットの事例


Mujinのお客様のなかには、構内物流にロボットを導入して自動化・効率化を実現した事例があります。

自動車部品の製造販売を行っている株式会社アイシン様では、工場における次世代部品供給システムに2台の知能ハンドリングロボットと30台を超えるAGVを導入し、入荷した部品の管理と搬送の全自動化を実現しています。

知能ハンドリングロボットは50種類以上もの通い箱を扱うことができ、パレットからの段ばらしと保管棚や台車への仕分けを担います。AGVは入荷エリアでの部品の受け渡しに加え、保管、仕分け、組み立てラインへの配膳、空箱の回収といったさまざまな作業を効率よく行います。また、組み立てライン上の部品の数をWCS(倉庫制御システム)がリアルタイムに把握することで、在庫がなくなるまでの時間を計算し、AGVによる空箱回収と部品供給のタイミングを最適化しました。

物流ロボットの導入によって、これまで作業者が行っていた部品供給に付随する一連の作業を自動化するとともに、部品の取り違えといったヒューマンエラーの削減にも成功しています。

構内物流の改善は工場全体の生産性向上につながっている


構内物流は目立たないものですが、製造業が円滑にモノづくりをする上で重要な役割を担っています。この記事で紹介したとおり、製造現場がモノづくりに集中できる環境を整えるためには、構内物流の改善が不可欠です。構内物流の改善に取り組み、工場全体の生産性向上を目指してみてはいかがでしょうか。

Mujinでは、高度に知能化されたAGVをはじめとする物流ロボットを提供しています。構内物流の効率化には物流ロボットが役立つため、ご興味がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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