ものづくり補助金とは | 物流事業者・倉庫運営者が活用できる補助金制度を紹介

by OtsukaAyaka

ものづくり補助金とは?


ものづくり補助金は、生産性向上のためのサービス開発、試作品開発、生産プロセス改善のための設備投資に対する費用に対して支援する補助金です。

「ものづくり補助金」は略称で、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。「ものづくり補助金」という略称だけを見ると製造業だけが対象の補助金のように聞こえますが、実は物流業(物流センター・倉庫業・運送業)も対象となります。

「革新的な製品・サービス開発」や「生産プロセス・サービス提供方法の改善」を通して、他社との差別化を図ったり新たなビジネスモデルを構築する取り組みを支援することを目的とした補助金制度のため、物流ロボットを活用して倉庫の自動化を図るようなケースに最適といえます。

この記事では、物流事業者が利用できるものづくりの補助金の概要・特徴や採択されるポイント、物流事業者が採択された事例についてご紹介します。最新情報については経済産業省や中小企業庁等が発信している情報をご確認ください。

ものづくり補助金の概要・特徴


ものづくり補助金には、「一般型」・「グルーバル展開型」の二種類があります。

【一般型】

概要 中小企業等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設・システム投資等を支援
補助金額 100万円~1,000万円
補助率 1/2(小規模企業者・小規模事業者2/3)
補助対象経 機械装置、システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

【グローバル展開型】

概要 中小企業等が海外事業の拡大・強化を目的とした「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援
(①海外直接投資、②海外市場開拓、③インバウンド市場開拓、④海外事業者との共同事業のいずれかに合致するもの)
補助金額 1,000万円~3,000万円
補助率 1/2(小規模企業者・小規模事業者2/3)
補助対象経費 機械装置、システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費

ものづくり補助金という名前から、製造業のみが対象となる補助金と考えられる方も多いですが、条件を満たす中小企業、および小規模事業者であれば業種を問わず幅広く利用することができます。また、他の補助金と比べ補助金額が大きいのが特徴です。

なお、ものづくり補助金の制度・公募要領に関しては、募集毎に変更になる場合もあります。申請を検討する際には、公式サイトより最新の情報を確認するようにしましょう。

ものづくり補助事業金公式ホームページ「ものづくり補助金総合サイト」

ものづくり補助金の申請に必要な書類と採択されるためのポイント


申請に必要な書類は、主に以下の通りです。

1.事業計画書(具体的取組内容、将来の展望、数値目標等)

2.賃金引上げ計画の表明書

3.決算書等(直近2年間の貸借対照表・損益計算書等)

また、任意提出にはなりますが、提出することにより加点対象となる書類もあります。審査を有利に進めることができるので準備できるものについては準備しておくと良いでしょう。

審査のうえで特に重要といわれているのが、事業計画書です。ここでは、書き方のポイントとなる点を紹介いたします。

 ①審査項目を意識する

ものづくり補助金の公募要領には、以下の観点で審査されると記載されています。

技術面 ・製品やサービスの開発が革新的であるか?
・課題解決の方法が明確で具体的か?
事業化面 ・事業化の方法、スケジュール等が具体的か?
・製品、サービスの市場性はあるか?
・企業の収益性、生産性は向上するか?
政策面 ・地域経済への貢献など、国の政策に合致しているか?

ミラサポplus「ものづくり補助金の書き方」より引用

 ②加点項目を押さえる

ものづくり補助金の審査では、要件を満たすことで加点を受けることができる項目があります。

成長性加点 ・有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
政策加点 ・創業、第二創業間もない事業者(5年以内)
・パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
災害等加点 ・有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
賃上げ加点等 ・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者
・被用者保険の適応拡大の対象となる中小企業、小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

ものづくり補助金総合サイト「公募要領 概要版

 ③申請サポートサービスの利用を検討する

過去の補助金申請者のデータを見てみると、事業計画書の作成にはある程度の時間を要することが分かります。時間をかけて事業計画書を作り込むほど、採択率は高くなる傾向がみられます。また、中小企業診断士や税理士等、申請書類の作成をサポートしてくれる支援者を利用するほど採択率は高くなる傾向がみられます。

ものづくり補助金総合サイト「データポータル」より作成

もちろん自分自身で作成できる場合には自身で作成する方が良いですが、作成にはかなりの時間を要します。また、直近の採択率の平均はおよそ40%と、必ずしも採択されるわけではありません。

ものづくり補助金総合サイト「採択結果」より作成

支援者を利用する場合には費用も発生しますが、自分自身で行う場合の手間や時間と比較し利用を検討してみるといいでしょう。

物流事業者が採択された事例の紹介


事例①:パレタイズ設備の導入による、入庫作業の自動化

こちらは食料品製造工場においてパレタイズ設備の導入に補助金を利用した事例です。売上の増加に伴い工場の増設を図りましたが、受注量に対して生産量が追い付いていないという課題を抱えていました。製品完成後から倉庫搬入までの運搬作業時間が要因であると考え、製品の搬入作業を自動化し、製造能力の増強を図ることとしました。

全て人手で行っていた製品の搬入作業を自動化するため、アキュームコンベヤ、パレタイズロボット、パレットコンベヤ、在庫管理システムから構成される搬入ラインを新たに設置しました。その結果、製造する製品は200~300ケースの増産につながり、2~3人を要していた倉庫への搬入人員も不要となりました。搬入人員を削減できたことによって在庫入力の人為的ミスの軽減にもつながりました。

ものづくり補助事業関連サイト「平成28年度採択事例 有限会社宇部煎餅店

事例②:デパレタイズロボット導入による荷役作業の軽減

こちらはスーパーマーケット向けの食料品や、ホームセンター向けの商品の物流業務を請け負う物流センターにおいて、デパレタイズロボットを導入した事例です。近年、労働力の確保が非常に困難な一方で、取扱量の増加により荷役作業を行う従業員への負荷が大きくなっていました。従業員の作業負担を軽減し、職場環境の改善を図ることが喫緊の課題であると考え、荷役作業の工程にランダムデパレタイズロボットを導入することとなりました。

パレットに積載されて入荷した商品をコンベヤへ投入する工程にランダムデパレタイズロボットを導入することで、従業員の肉体的負荷は軽減され、作業効率も約2割向上が見込まれます。

ものづくり補助事業関連サイト「平成29年度採択事例 株式会社共同物流サービス

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今回は、物流事業者が活用できるものづくり補助金について紹介させて頂きました。

ものづくり補助金は、申請書の作成等、事務作業の手間は発生しますが、採択されれば手厚い補助金を受けることができます。物流自動化をご検討の際には補助金の活用も視野に入れながら取り組んでみてはいかがでしょうか。

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