AGV特集② | 愛知県の主要メーカーが選ぶAGVとは?製造業AGV導入のポイント

by Megumi Yamada
愛知県主要メーカーに選ばれているAGVとは

労働力不足、そして変種変量へとシフトとした生産ラインに適応すべく、いよいよ本格的に自動化への機運が高まっている搬送・物流工程。そんな中で、トヨタグループ様をはじめとした自動車メーカーを中心に、愛知県の製造現場に多数導入されているのが株式会社MujinのAGVです。 

Mujin名古屋営業所長として、自動車メーカーを中心としたお客様へのAGV導入を支援する木全(きまた)へのインタビューを通じて、 愛知県の製造メーカーがMujinを選ぶ理由や、そこから見える製造業が検討すべきAGV導入のポイントを紐解いてゆきます。 


株式会社Mujin 名古屋営業所長 木全洋一郎

<PROFILE> 1986年名古屋生まれ。東海地区の設備商社でトヨタグループ様を中心に10年間以上設備営業に従事し、数多くのロボット自動化案件を担当。従来の設備営業の傍ら新規事業を立ち上げ、業種にこだわらずロボットやAGVを含めた提案を実施。 2020年よりMujinに入社し、現場最優先の文化の中で設備営業を務めた経験を基に、MujinのAGV販売体制を強化。

製造業におけるAGV拡販の鍵

Mujinは、2015年に世界初のばら積みピッキング用ティーチレスロボットコントローラをリリースし、主に垂直多関節型のハンドリングロボットによる自動化リューションを提供してきました。そんなMujinがAGVの提供を開始したのは2019年。当初はハンドリングロボットとの連携を前提とした、知能ロボットソリューションを構成するコンポーネントのひとつとして、AGVの取り扱いが始まりました。 

翌2020年、日本国内で2番目の拠点となる名古屋事務所の立ち上げメンバーとして入社した木全には、ひとつの目論見がありました。 「前職でAGVの開発案件を担当していた経験もあり、AGVによる工場内物流の自動化は、今後のメインストリームになるという確信がありました。先ほどもお話した通り(前回の記事を参照)、愛知の『人手を付加価値の低い仕事から付加価値の高い仕事へ』という省人化に対する方針や、変種変量に対応した生産ラインには、AGVが必ずフィットするからです」 

名古屋事務所の戦略の重要なひとつとして、AGVの本格的な拡販を計画する木全。しかし、当時のMujinには製造業における自動化実績が多くありませんでした。 「工場とは桁違いの物量や複雑な工程を自動化してきた物流領域の実績は強みではあったものの、愛知の工場は要求仕様が非常に高いです。まずはそれをクリアしないと愛知県での拡販は難しいと、経験上理解していました。愛知県のお客様からの信頼を得て安心して使っていただくためにはどうしたらいいか。その答えが”トヨタ生産方式への対応”でした」 

「生産ラインを止めない」自動化機器の重要性

トヨタ生産方式では7つのムダを掲げており、その1つが在庫です。在庫を必要以上に抱えることは、生産性を逆に低下させるという考え方です。常にリアルタイムで材料や部品の供給を行っているため、工場には約半日分の在庫しかないケースもあり、万が一自動化機器が原因で生産が止まってしまうような事態が発生した場合でも、すぐに復旧できる体制を備えておく必要があります。
このような、生産を合理化したトヨタグループ様における重要な考え方は、愛知県三河地区を中心に多くの工場の方針となっています。

「トヨタ生産方式の求める自動化機器への要求仕様は非常に高いです。ハードウェア面だけではなく、復旧時の供給体制やメンテナンスの内製化サポート、ノウハウの蓄積・共有化など、生産を止めないためのあらゆる仕組みが必要です。だからこそ、対応できる提供体制を構築できれば、愛知県のお客様への大きな提供価値になると考えました。そこで、トヨタ生産方式を知り尽くした信頼できるSIer様1社とタッグを組んで、2年かけて体制を作っていったんです。そのあいだ、ほとんど販売はしませんでしたね。お客様からのご要望を聞いて、SIer様に相談して、社内を説得しながら、ただひたすらに1つ1つをクリアしていきました」

AGV運用のノウハウ蓄積と内製化

2年という月日を経て構築したAGVの提供体制。木全は「お客様に安心して使っていただける製品と、生産を止めないための体制を作ってきたので、他社と比べても圧倒的に良いと言える自信があります」と、熱く語ります。

「AGVは新しい技術を取り入れて進化し続けている新しい搬送手段です。そのため、今まで起こりえなかったトラブルが、どうしても避けては通れません。その一例が、ネットワーク環境です。AGVは無線機器のため、不安定なネットワーク環境下での運用にはさまざまな問題が発生します。特に製造業では、『見える化』や『DX』によりIoT化が進み、各機器の情報が無線で飛び交っています。そんな環境下で、いかにAGVをうまく運用していくかを含めてノウハウを蓄積するために、無線機器メーカー様との協業を強化することも、体制強化の一環として行ってきました。また、Mujinは技術メーカーなので、万が一システム面で不具合が起きてしまった場合でも、迅速な復旧はもちろん、ログ解析や原因の改修に向けたご提案をさせて頂く事が可能です。その他、内製化に必要な保守サポートやレイアウト変更に関わる部分の教育サポートも行っています。

お客様の求めていること、喜んでいただけるところは細かいところまで作り込んできたので、使って頂ければ実感していただけると思います。そういった面でスモールスタートで始まったトヨタグループ様にも評価いただき、着実に横展開を続けているのが現状です」

トヨタ自動車九州株式会社 様

MujinのAGVの今後

AGVについて、今後の展望を聞きました。 

「日々引き合いが増えていることから、数年前に見据えていた製造業のAGV活用の波がいよいよ高まっているのを実感しています。AGVは”運ぶ”というシンプルな役割を持った機器ですが、うまく稼働できないと生産自体が止まってしまう重要な役割を担っています。ですので、まずは現場で安心して使っていただける商品を作ることに、これまで全力で取り組んできました。今後は、知能ロボットコントローラメーカーとしてメリットを生かし、ハードウェアとソフトウェアの両面からAGVを高度にコントロールするシステムでお客様へ提供できる価値を増やしながら、今後とも製造現場の課題解決に貢献していきます」

 

 前回の記事もチェック
→ AGV特集① | なぜ今AGVなのか?愛知県の搬送自動化事情

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