物流倉庫の自動化は出来ることならしたい、だけど「何から検討して良いのか分からない」「コストをどれだけかけたら効果がでるのか」といったお悩みから、なかなか検討に踏み切れない企業様も多いのではないでしょうか。
たしかに物流倉庫を自動化することで生産性が上がるか、ROIを回収できるかというと、必ずしもそうとは限りません。しかし、しっかりとした手順を踏めば、効果的な自動化の検討を進めること可能です。この記事では「導入検討初期にどのように検討すれば効果的な自動化を実現できるか」について解説します。
物流センター自動化への第一歩は現状分析から
自動化を進めるにあたって、まずやるべきことは「現状を数値化して把握する」ことです。課題を解決するための手段として自動化が正しいのか、そこが真因かどうかを把握しないと結果的にベストな改善とはなりません。つまりはコストをかけて自動化したのに効果がない、もしくは逆に非効率になる場合さえもあります。
例えば梱包場の自動化改善を検討するとします。その時に、まず取り掛かるべきは「各卓の1時間当たりの生産数はいくつなのか?」を正確に把握することです。時間当たりの生産性が10個の梱包卓であれば、改善が達成できる数値は11個以上と置くことができます。この値が明確になると、設備能力を決める際に時間当たりの生産性が10個以下の機器を除外できるようになります。
このように現状を数値化することで選択肢を絞り、結果的に効率的な設備の導入に繋がります。
自動化する上での前提条件を決める
自動化を進めるにあたっての前提条件とは何でしょうか?先ほど説明した現状把握も大事ですが、重要なのは「かけられるコスト」と「ターゲットの物量」です。コストに関してはいくらまでなら投資出来るという目線でも明確に出来ますし、作業員の人件費が年間どのくらい発生しているか、というアプローチでも算出が可能です。この段階ではそこまで詳細な数値ではなくても良いですが、仕様決めや機器選定時にはある程度のターゲットを決めて進めた方が、より具体的な設備計画につながります。
例えば自動化にあてられる予算が5000万円なのか、もしくは人件費年間500万円×作業者10名分の固定費を削減したいのか、などで大体の設備投資額が算出できるので、初期段階では概算で良いのでまずは明確にしましょう。
次にターゲットの物量です。物流業界では荷量の増減が繁忙期と閑散期の差が大きい場合が大半です。そのため「どの時期の物量に設備能力を合わせるか」が重要になります。
極端な例で言うと、繁忙期の1週間は荷量が毎日10万個であるのに対し、それ以外の時期は1万個だとします。ここで設備能力をピーク時の10万個に合わせて設計すると、他の358日は1割の能力しか使わずに9割は能力が過剰な状態となってしまいます。
このような場合、平常時には8時間で1万個を処理が出来る設備を設計し、繁忙期は24時間フル稼働+足りない能力分は人手を増やすことで、設備投資を最小限に抑えながら効果を最大化することが可能です。コストが掛けられる場合は、平常時には8時間3.3万個の能力を設定して、繁忙期は24時間フル稼働するば処理できる設備、という選択肢も生まれます。
以上のように、設備投資予算とターゲットとする物量を決めることで、導入する設備の能力を決めることができます。それと同時に、自動化したあとにどのように運営していくかのある程度の方向性も決めることができます。
倉庫の現状が分かれば次はコスト比較
現状把握と前提条件が明確になると実際にかけられるコストの試算が可能となります。
例えば人による作業だと年間1000万円のコストが発生し、この作業を5年で回収するとします。人の作業のままだと5年後も1o年後も毎年1000万円が固定費として発生しますが、自動機に5000万円のコストをかけて自動化すれば、初期投資は増えますが毎年1000万円の人件費を削減できるので、6年目以降からは利益が生まれます。
このように、コストを試算することで、すべてを自動化した方が良いのか、もしくは自動化と人手作業をうまく融合させた方が良いのかを、コスト回収という観点で判断できるようになります。
自動化検討時に見落としがちなランニングコスト
自動化検討時に考慮する必要がある重要な要素は、毎年のランニングコストです。自動機を運用する場合は、あらかじめ定期的なメンテナンスや故障時の修繕費用などを見込んでおく必要があります。
例えば、予算が5000万円の場合、すべてを初期投資に使うのではなく4000万円を初期投資とし、年間200万円程度はメンテナンス費用として考えることが必要です。事前にコストを想定しておくことで、故障して出費が増えたとしても、会社の利益には影響しない範囲でのメンテナンスが可能となります。
メンテナンスが考慮されてない場合は、元々費用が考慮されていないのでメンテナンスが出来ずに結果的に故障し使えない事態となり、最終的にメンテナンス費以上の費用がかかることもあります。ランニングコストは、必ず導入検討時に把握して備えましょう。
物流センター自動化のメリット・デメリットは?
自動機への投資は決して安くはないため、メリットと同じくらいデメリットも重要です。デメリットも把握することでさらに改善する方策や運営方針も明確になるので、しっかりとした理解が必要です。
物流センター自動化のメリット
- 長期的に見るとトータルコストを抑えられる
- 正確に決められた作業ができる
- 最小の作業者で繁閑の対応が可能となる
- 人が集まらないリスクを低減できる
物流センター自動化のデメリット
- 設置後のレイアウト変更が難しい
- 対象物が変わる際の柔軟性が低くなる
- 予想外の物量では人海戦術がやりにくい
- 人との共存が難しい場合もある
デメリットになりうる項目もまだまだ少なくはありませんが、昨今ではAGVや知能化ロボットの開発が進んでおり、導入する機器によってはデメリットを解消できます。
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自動化検討時には、最新技術を調査することで以前はできなかったことが自動化できることがあります。また、専門家に相談することで、まだ表に出ていない解決策を提案して貰うこともできるので、一度相談してみましょう。
失敗しない物流センター自動化のまとめ
自動化とは長期的な目線や明確なターゲットを決めての導入が必要です。
フラットな目線でセンター全体を現状把握し、真因を見つけることが最小限のコストでの効率化につながります。また年間を通しての機器の使い方も明確にすることで過剰な投資を防止することができます。必要なステップを踏んで進めていけば必ず効率的に人を減らしたり、重労働を減らすなどが可能となります。
また自動化の技術は日進月歩なので、前回できなかったことが今は出来るようになることもあります。一度諦めた自動化を再度検討する際には、最新の情報を集めたり、専門家に相談しながら進めることをおススメします。