WMSは物流センターを効率的に運用するために欠かせないシステムですが、非常に多くの機能を持っているため、初めて導入する場合にはどのように進めたら良いのかわからない物流事業者様が多いのではないでしょうか。この記事では、そもそもWMSとはなにか、WMSによってどんなことができるのかをご紹介した上で、WMSを導入する時に検討すべき項目や、導入の際のステップを解説していきます。
物流センターにおけるWMSとは
WMSとは、「Warehouse Management System」の略で、物流倉庫内のモノの状況を把握・管理できる倉庫管理システムです。
主な機能としては、入出荷などに関わる全ての商品情報を管理する”サーバ管理機能”や、ハンディターミナルなどを使用して入出荷時の検品作業をする”検品機能”、自動機とデータのやり取りをしてセンターを自動化する際に活用する”マテハン機器連携機能”などがあります。
このように物流センター運営に欠かせない、作業を管理する機能を数多く持っているのがこのWMSです。
物流センターで必要とされるWMSの機能とは
色々な機能を持たせられるWMSですが、物流センターで必要とされる機能はどのようなものがあるでしょうか?WMSは大きく3つの役割を担っています。
現状把握するツールとしてのWMSの機能
物流センターでは多種多様な作業が発生し、それらを効率的に進めながら入出荷することが必要です。仮に物流センター効率化を目的として、ある一部分だけ効率化したとしても、他の部門がボトルネックとなっていると全体の効率化とはならないことがあります。
例えば入荷の作業だけを1時間で100箱対応できるように効率化したとしても、そのあとの格納や出荷の能力が1時間で50箱のままだと、全体の効率は1時間に50箱のままとなってしまいます。
このように一部分の効率化だけでなく全体の現状把握する際にWMSを使用することで、物流センター全体の現状把握することが可能です。
マネジメントツールとしてのWMSの活用
物流センターは多種多様な作業を効率よく、ムダ無く、遅延なく、しかもコストを抑えながら実施しなくてはいけません。そのためには、業務を標準化したうえで進捗状況を管理することが重要になります。WMSはこのように作業を円滑に行うための「作業を管理するツール」としても活用されます。
例えば、各セクションに配置された人員が10人だとします。このセクションに標準化された15人分の作業指示が来た場合にはどうなるでしょうか?このようになると作業をこなせないだけでなく、物流センター全体のモノの流れが停滞し、全体に悪影響を与えてしまいます。
WMSを使用することで決められた人員に対して最適な業務量を指示することが可能となり、物流センター全体を効率的に作業を進められるようになります。
情報共有ツールとしてのWMSの活用
WMSを導入することで現在の物流センターの状況を誰でも確認できるようになります。
例えば、オーダーが入った商品がなかなか梱包卓に届かない場合でも、WMSであればその商品が現在どこにあるかを即座に確認することが可能になります。
また、なかなか届かないことの根本的な原因を、履歴を分析することで把握することも可能です。
これらの情報を参考に、物流センターをさらに効率的に動かすための施策を講じることができるようになるのです。
物流センターでWMSを導入して実現できること
物流センターの業務は大きく「入荷」「格納」「出荷」に分けることができますが、WMSはそれらの作業のすべてを把握し、入荷した商品の次の動きを理解しながら、どこに保管したら効率的かを総合的に判断できます。
つまりはWMSでは出荷を効率的に行うために、入荷の作業からコントロールすることができます。
WMS導入時の検討の進め方
さまざまな機能を担える便利なWMSですが、導入時にしっかりと検討しないと非効率なだけでなく、無駄なコストがかかってしまいます。
導入を効率よく、そして使いやすい機能を導入するためには以下のステップで進める必要があります。
現状把握と課題の抽出
まずは社内の現状調査が必要になります。また同様の案件がないかどうか社外の事例もリサーチしましょう。
体制・システム・運用・取引先条件・システム化で解決すべき問題や課題など、WMSを構築する上で必要な情報を事前に調査します。現状調査にあたっては、問題を課題化し整理するまで実施します。さらには解決の優先順位付けまで行うと今後の進める際の指標になります。
解決の優先順位の中でも業務改善とシステム化による改善とを区別し、システム化による改善の対象となるものをシステム化要件として取りまとめる必要があります。
課題に対する必要とする機能の抽出
課題が抽出され優先順位付けなどによりリスト化がされたあとは、それらの課題を解決する機能の確認になります。
これをすることで抽出された機能が何を解決するための機能かを明確にすることが可能となり、最終的に完成したときの確認項目にもなります。
導入する目的の策定
現状調査で明確になった課題に対して、業務改善による課題解決対象を除いた必要なシステムに対して要件定義を実施します。
これまでのステップにより、WMSの機能範囲、運用フロー、システム構成などを策定し導入目的も同時に明確にする必要があります。
概算費用の算出と費用対効果
要件定義が完成した段階では概算費用とWMS導入によって期待される効果とを比較することが可能な状態となります。これらを比較して費用対効果の面からの実現可能性を検討します。
実際には素晴らしい機能だとしても、費用面でのメリットがない場合は機能の見直しが必要になります。最終的には機能の削減、追加、修正、スケジューリングを行って要件定義を確定させます。
RFPの作成とシステム開発
ここに来るまでの検討には時間がかかりますが、要件定義が明確になると、あとはこれらを形にするためにシステム部門やシステム開発社への依頼となります。
ここまでの条件が揃っていればシステム部門への説明に関してもスムーズに進められるのでここまでの各ステップは必要になります。
物流センターにWMS導入時の実施項目のまとめ
物流センターの効率化には欠かせないWMSですが、数多くの機能を多く持っており、導入することで物流センターの効率化を実現できます。
しかし、目的を明確にし本当に必要な機能を選定する必要があり、これらのステップを確実にふまないと、せっかくコストをかけて導入したシステムなのに効率的な運営に繋がらないこともあります。
専門家に相談しながら、物流倉庫全体の効率化の検討を進めてみてはいかがでしょうか。