今、ロボットで物流自動化をするべき3つの理由 | 物流ロボットのメリットや最新技術動向を解説

by Megumi Yamada

現在の物流業界は、さまざまな課題を抱えています。それらの課題を解決するためには、ロボットによる物流業務の自動化が効果的です。しかし、「コストが高い」「運用が大変そう」といったイメージから、ロボットの導入を先送りにしているという企業も多いのではないでしょうか。

確かに、ロボットの導入にいくつかのハードルがあることは事実です。しかし、それらを乗り越えてでも、物流自動化にいち早く取り組むべき理由があります。この記事では、ロボットで物流自動化をするべき理由や物流ロボット導入のメリットについて解説します。

ロボットで物流自動化をするべき3つの理由


今、ロボットで物流自動化をするべき理由は大きく3つあります。なぜ物流自動化に取り組むべきなのか、みていきましょう。

①需要拡大への対応

②供給力不足への対策

③企業競争力の強化

①需要拡大への対応

EC(電子商取引)市場の急激な成長に伴って、物流の需要は年々高まっています。国土交通省の資料によると、EC市場全体の規模は2019年時点で19.3兆円となっており、5年間で約1.5倍に拡大しています。それに伴って宅配便の取扱実績は5年間で19.6%増加しており、個数換算では約7.1億個も増えている状況です。小口配送が中心であるEC市場が拡大すると、物流業界全体の物量が増えるという構図になっています。

2020年のEC市場は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ほぼ横ばいという結果になりましたが、2021年以降は再度拡大していくと予測されています。これからのウィズコロナ・ アフターコロナの時代では、輸出入や企業活動が活発になっていき、さらに物量が増えることになるでしょう。

また、課題は物量の増加だけではありません。即日・翌日配送や非接触・非対面サービスが求められるようになった影響で、オペレーション自体も難しくなっています。さらなる需要の拡大に対応しつつ、高度なオペレーションを実現するためには、ITやロボットの活用が不可欠であると考えられます。

②供給力不足への対策

日本では少子高齢化による労働力不足があらゆる業界で進んでいますが、その中でも物流業界は特に深刻な状況です。国土交通省の資料によると、物流業界はほかの業界に比べて人手不足感が強まっており、ドライバーや倉庫従事者が不足する傾向にあります。

さらに、2024年4月1日には働き方改革関連法によってドライバーの時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度などが適用されます。この働き方改革関連法の影響で生じる諸問題は「2024年問題」と言われており、すでに深刻な労働力不足に陥っている物流業界の供給力がさらに低下する要因になると考えられます。

「2024年問題」は基本的にはドライバーが対象になりますが、倉庫従事者にとっても他人事ではありません。たとえば、ドライバーの長時間労働を引き起こす要因として荷待ち時間の長さが挙げられているため、倉庫側の業務も効率化する必要があります。また、ドライバーが対応していた荷役作業を倉庫従事者が代わりに引き受けなくてはならなくなり、倉庫側の負担が増える可能性もあるのです。

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上述したように、物流の需要は今後大きく拡大すると予想されています。一方で、今のやり方をそのまま続けていれば、供給力が不足していくのは明らかです。このままだと、需要が供給を大きく上回ってしまい、モノを運びたくても運べなくなる「物流クライシス」を引き起こす可能性があります。物流企業は労働力を補うためにITやロボットを導入し、供給力の強化を図っていかなければならないのです。

③企業競争力の強化

ロボットで物流自動化をするべきもう一つの理由は、企業競争力の強化につながるからです。

昨今ではロボットによる自動化があらゆる業界で進められており、たびたび注目を集めるようになりました。物流業界においても、需要拡大や供給力不足といった背景からロボット導入が進んでいくと考えられますが、現時点では「まだ早い」と導入を先送りにしている企業が多い状況です。

そうした中でロボットの導入をいち早く進められれば、ほかの企業に先駆けて自動化のノウハウを蓄積していけます。今後、需要拡大や供給力不足が本格化した際に、そのノウハウが役立つことは間違いありません。

また、これからのロボット社会では、ロボットを扱える人材が不足していくと予測できます。今からロボットの導入を進めていれば、貴重なロボット人材を早い段階から確保したり、自社内で人材を育てていったりすることも可能です。

実際に、すでに物流自動化に取り組んでいる企業はグローバルでの競争力を高めています。たとえば、ファーストリテイリング様は、年間約13億点もの商品を安定して提供するために、数年前より物流改革を推進してきました。輸送手段の拡充やICタグ・ロボットなどを活用した倉庫自動化など、物流・輸送インフラの強化を進めることで「適時・適品・適量の店頭投入」の実現を目指しておられます。ロボットに関しては、2018年に有明物流センターへ導入してから各国への展開を進行しており、同社のグローバル事業の拡大を支えています。

ロボットによる物流自動化は、これからの時代を生き抜くための企業競争力の強化につながります。ロボットの導入が難しいからこそ、早期に取り組んでいくべきといえるでしょう。

ロボットによる物流自動化のメリットは?


すでに一部の物流倉庫では、物流ロボットによる業務の自動化が進みつつあります。ここでは、物流ロボットのメリットを5つご紹介します。

①生産性の向上

人が作業をしていると、作業者によってスピードにバラつきが出たり、疲れてミスをしてしまったりして、作業品質がなかなか安定しません。特に、重い荷物を扱っていると作業のスピードが落ちやすく、対応できる物量に限界があります。

しかし、ロボットであれば、重い荷物であっても安定したスピードと品質を維持したまま作業ができます。また、休憩が必要な人とは違ってロボットは24時間稼働し続けられるので、夜間や休日に作業を進めることも可能です。

ロボットを活用すれば、より少ない労力で多くの物量をこなせるようになり、需要の急激な拡大に対しても柔軟に対応できるでしょう。

②作業者の負担軽減

物流倉庫の業務は肉体労働が中心であり、作業者にとって大きな負担になります。また、重い荷物を持ち上げたり、厳しい暑さや寒さの中で作業をしなければならなかったりするため、作業者の怪我や体調にも気をつけなければなりません。

ロボットによる物流業務の自動化は、こういった作業者の負担を軽減するのに役立ちます。

長期間にわたって安心して働ける環境を整えることができれば、作業者の離職が減り、人手不足の解消につながるでしょう。

③物流倉庫の安定稼働

物流は私たちの生活を支える重要なインフラであり、止めることはできません。人の作業が中心の物流倉庫では、作業者の怪我や病気によって人員が不足すると現場がうまく回らなくなりますが、ロボットで自動化していれば少ない人員であっても安定した稼働が実現できます。

また、コロナ禍や災害時のような有事の際には作業者が出勤できなくなり、物流がストップする恐れがありますが、そういった状況下でも影響を最小限に抑えられます。昨今では企業のBCP対策が重要視されていますが、そういった観点からもロボットによる自動化は効果的な手法といえるでしょう。

④デジタル化の推進

ロボットを導入して物流倉庫の業務を自動化すれば、各業務の結果がデータとして蓄積されていきます。データを確認すれば、いつ・何が・いくつ・どこへ運ばれたのか、といった情報が明確に分かるため、人が作業をしている時よりもトラッキングや予測・分析がしやすくなるのは間違いありません。

蓄積されたデータは物流業務の改善に役立つだけでなく、SCMなどのシステムと連携させることでサプライチェーン全体の効率化にも役立ちます。たとえば、物流倉庫の処理能力を考慮した物流計画の策定、稼働状況に基づく配送計画の最適化などを実現可能です。

需要増加や供給力不足といった背景から、これからの物流業界では物流倉庫の効率化だけでなく、サプライチェーン全体の効率化も求められます。いち早くロボットを導入してデータを蓄積しておけば、サプライチェーン全体の効率化に取り組む際にも役立つでしょう。

⑤ブランドイメージの向上

ロボットによる物流自動化は、ブランドイメージの向上にもつながります。たとえば、ロボットを積極的に活用している先進的な企業として認知されれば、ロボット人材を始めとする優秀な人材が集まりやすくなります。また、作業者の負担が少なく働きやすい環境であることをPRすれば、人手不足が進む中でも人材を採用しやすくなるでしょう。

取引先から見ても、物流自動化に取り組んでいる企業の方が安定したサービスを提供してくれるため、信頼を得やすくなります。

物流ロボットの最新技術動向


ロボットによる物流自動化のメリットは理解できたけれども、「費用対効果を得られるかが分からない」「自社で使いこなせるかが不安」といった悩みから、ロボットの導入に踏み切れないという方も多いでしょう。しかし、昨今の物流ロボットは大幅な進化を遂げており、導入のハードルが下がりつつあります。

たとえば、ロボットに作業内容を記憶させるためには、ティーチングと呼ばれる設定が必要です。従来、ティーチングには専門的な技術やノウハウが必要とされていましたが、今ではティーチングレスですぐにロボットを動かす技術が存在しています。また、ロボットの目となるカメラや画像処理技術が発達したことで、多種多様なモノを瞬時に識別し、ロボットを適切に制御できるようになりました。

このようなロボットの進化によって、1台のロボットが多品種に対応できるようになり、費用対効果も得やすくなっています。今後も技術開発は進んでいくため、ロボットはさらに導入しやすくなっていくでしょう。

また、ロボットの導入は国や自治体が支援を進めており、ロボットの導入を支援する補助金制度が用意されていますのでチェックしましょう。

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物流自動化は今からでも遅くない


物流業界はさまざまな課題を抱えていますが、ロボットによる物流自動化がそれらの解決策となることは間違いありません。ここまでにご紹介した通り、物流ロボットの導入には多くのメリットがあり、導入もしやすくなっている状況です。

物流自動化に取り組むのは、今からでも遅くありません。これからの物流業界で競争力を発揮するためにも、物流ロボットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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